まず、軌道は「電子の軌跡」ではありません
電子を惑星のように固定された道で回る粒として描く模型は導入には便利ですが、量子力学でいう原子軌道(orbital)は電子の状態を表す波動関数です。図に描かれる雲や形は、その状態から得られる「電子を見いだす確率密度」の空間分布を模式的に示します。
正確には、確率はその領域で |ψ|² を積分して求めます。以下の図は規格化した波動関数の厳密な等値面ではなく、形と節面の理解に使う概念図です。
1. 4つの量子数
水素原子の非相対論的模型では、軌道を n, ℓ, mℓ で分類し、電子のスピンを ms で表します。多電子原子でも電子状態を整理する基本言語として使います。
| 量子数 | 許される値 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 主量子数 n | 1, 2, 3, … | 殻、軌道の広がり・エネルギーに関係 |
| 方位量子数 ℓ | 0 ~ n−1 | s(0), p(1), d(2), f(3)… |
| 磁気量子数 mℓ | −ℓ ~ +ℓ(整数) | 同じ副殻内の異なる軌道 |
| スピン磁気量子数 ms | +½, −½ | スピン成分の2状態 |
「s電子が自転している」という古典的な絵は誤解のもとです。スピンは電子の内在的な角運動量という量子力学的性質です。
2. 軌道の形を見比べる
p, d軌道の色分けは波動関数の位相(符号)の違いを示します。正負は電子の電荷や確率の正負ではありません。図の方向は模式的で、mℓ の値と描かれた実軌道の向きは一対一では対応しません(実軌道は複素球面調和関数の組み合わせです)。
3. どうして1つの軌道には最大2電子?
パウリの排他原理
同じ原子内の2電子が、4つの量子数をすべて同じ値にすることはできません。ひとつの空間軌道には逆向きのスピン成分をもつ2電子まで入れます。
フントの規則
等エネルギーの軌道が並ぶ副殻では、基底状態の電子は可能な範囲でまず別々の軌道へ平行スピンで入ります(一般的な近似規則)。
副殻の収容数
mℓ の種類は 2ℓ + 1。各軌道に2個なので、副殻の最大電子数は 2(2ℓ + 1) です。
構築原理による軌道充填順序は、多電子原子の基底状態を整理するための近似的な経験則です。実際の軌道エネルギーは電子間相互作用などに依存し、Cr・Cuをはじめ例外も生じます。
4. 自分で確認する
回答すると解説が表示され、記録がこの端末に保存されます。
次の学習につなぐ
電子配置と量子数から、周期表の各族の共通性や化学結合を説明できるようになります。